※本記事は、農林水産省(令和8年1月1日掲載)
「農林水産大臣 年頭所感(令和八年)」
(https://www.maff.go.jp/j/kunzi/r080101.html)を参考に、**Grean Loop編集部**が再構成・解説したものです。
農林水産大臣・年頭所感を読み解く
農林水産大臣の**鈴木 憲和は、令和8年の年頭所感で「農は国の基なり」という原点に立ち返り、食料の安定供給と現場の納得感**を最重要視する姿勢を明確にしました。理想的な政策であっても現場の心が動かなければ成果は出ない——その認識のもと、短期対策から中長期の構造改革まで、幅広い施策が示されています。
コメ政策:需給の見通せる農政へ
主食であるコメは「一年一作」であるがゆえに、需給調整の精度が要となります。昨年の価格高騰を踏まえ、
水稲収穫量調査の精度向上
流通構造の透明化
需給見通し手法の見直し
備蓄政策の再検討
といった短期対策を整理。さらに、令和9年度以降の中長期対応に向けた検討を進める方針です。
水田政策の抜本見直し(令和9年度へ)
現行の「水田活用の直接支払交付金」を見直し、水田・畑を問わず、作物ごとの生産性向上を評価する支援へ転換。
コメの生産性向上
米粉や海外市場など需要拡大
コメ以外作物の本作化
を柱に、経営安定のセーフティネットの充実も検討されます。
食品産業
資材価格の高騰などにより事業環境が変化する中でも、農林水産物・食品を持続的に供給できる食料システムの確立が求められています。
昨年成立した「食料システム法」に基づき、持続的な供給に必要な合理的な費用を考慮した価格形成を推進。
あわせて、農林水産業と連携した国産原材料の利用拡大や、中継共同物流拠点の整備によるサプライチェーン全体の効率化を進めます。
これらの取組により、食品産業の付加価値向上と持続的な発展を図り、「食」を日本経済の稼ぐ力へとつなげていく方針です。
農林水産物・食品の輸出促進
世界の食市場拡大を追い風に、農林水産業・食品産業の**「海外から稼ぐ力」を強化します。
2030年に輸出額5兆円の目標を掲げ、輸出産地の育成や、日系商流にとどまらない現地スーパー・レストランなど未開拓市場の開拓**を進めます。
あわせて、海外の輸入規制の緩和・撤廃に向けた働きかけや、食品産業の海外展開、インバウンドによる食関連消費の拡大を推進。
さらに、日米協議の合意内容を踏まえ、米国の関税措置に対応しながら、輸出の維持・拡大を生産者・事業者とともに進める方針です。
環境と調和のとれた食料システム
食料システムを環境と調和したものとするため、新たな環境直接支払交付金の創設や、有機農業の推進など、みどりの食料システム戦略を加速します。
あわせて、気候変動への適応策を強化する「みどり加速化GXプラン」の検討を進めるとともに、改定された日ASEANみどり協力プランに基づき、持続可能な農業・食料システムの構築に向けた国際協力を推進します。
人・農地
持続可能な農業構造を実現するため、人・農地の確保と再編が喫緊の課題とされています。
規模の大小や個人・法人を問わず、農業で生計を立てる担い手を育成・確保するため、新規就農や新規参入を促進し、経営発展を後押しします。
あわせて、市町村が策定した地域計画の継続的な見直しと早期実現を進め、農林水産省職員が現場に入りながら、受け手不在農地の解消や担い手への農地集約化を図ります。
基盤整備とスマート農業の推進
少ない農業者でも生産水準を維持・向上できるよう、農業生産基盤の整備とスマート農業の推進を進めます。
農地の大区画化や水利施設の更新・省力化に加え、スマート農業技術の開発・普及を加速します。
さらに、スマート農業に対応した新たな生産方式への転換や人材育成、情報通信環境の整備を進めるとともに、専門作業を担う農業支援サービス事業者の育成・確保により、現場の負担軽減を図ります。
品種育成・普及と保護
食料の安定供給に向け、多収性や加工適性、高温耐性、病害虫抵抗性、スマート農業技術への適性などを備えた革新的新品種の開発と導入促進を進めます。
農業者や実需者、海外市場を含むニーズに対応した優良品種の育成・普及を加速するとともに、優良品種の海外流出防止に向けた仕組みの強化も検討します。
フードテック
自然災害や気候変動の影響を受けにくい安定的な生産力を確保するため、農業・農村の国土強靱化対策を進めます。
あわせて、完全閉鎖型植物工場や陸上養殖施設など、日本の先端技術を活用したフードテック分野への投資を促進します。
これらの技術を通じて、農林水産業の稼ぐ力を高め、世界のスタンダードとなる「食」の未来を創出します。
農村の振興
中山間地域は農業の多面的機能において重要な役割を担う一方、これまでの政策では衰退を止められなかったとの反省を踏まえ、将来にわたって営農し、稼ぎ、暮らせる農村づくりを進めます。
地域の実情に応じて、中山間地域等直接支払交付金の充実や、高収益作物の導入、複合経営の支援、きめ細かな基盤整備を一体的に実施。
さらに、官民共創や農泊、農福連携などを通じて、多様な人材が農山漁村に関わる機会を創出し、地域資源を生かした付加価値創出を図ります。
鳥獣害対策
鳥獣被害の防止とジビエの利活用を進め、農業者が安心して営農できる環境を整えます。
昨年11月に取りまとめられたクマ被害対策パッケージを踏まえ、クマ対策をはじめとする効果的・効率的な鳥獣害対策を迅速かつ着実に実行していく方針です。
畜産・酪農
畜産・酪農は、国民の食生活を支える重要なたんぱく源であり、地域経済の基盤でもあります。
畜種ごとの経営安定対策や持続可能性に配慮した取組を進めるとともに、畜舎や食肉処理施設の整備による生産基盤の強化を図ります。
あわせて、生乳や牛肉の需要拡大に取り組むほか、耕畜連携を通じた国産飼料の生産・利用拡大により、輸入飼料への依存低減を進めます。
家畜防疫
鳥インフルエンザや豚熱に加え、アフリカ豚熱の侵入リスクが高まっていることから、最大限の警戒が求められています。
飼養衛生管理の徹底を基本に、発生予防・まん延防止対策と水際での侵入防止対策を都道府県と連携して実施します。
あわせて、家畜防疫体制を支える産業動物獣医師の確保にも取り組みます。
森林・林業
人工林の6割超が利用期を迎える中、「伐って、使って、植えて、育てる」森林資源の循環利用を進め、林業振興と適切な森林整備、山村の活性化、温暖化防止につなげます。
JAS構造材やCLTを活用した中高層木造建築の推進などにより国産材需要を拡大するとともに、森林の集積・集約化やスマート林業の推進で生産基盤を強化します。
あわせて、森林整備や治山対策による森林吸収源機能の強化と国土強靱化、花粉症対策を着実に実行します。
これらの方向性を示す新たな森林・林業基本計画を、本年6月頃を目途に策定する方針です。
水産業
水産資源を将来にわたり利用できるよう、適切な資源管理を推進します。
海水温上昇など海洋環境の急激な変化に対応するため、海水温の自動観測による調査・評価の強化や、漁獲対象魚種の変化に対応した操業形態への転換を進めます。
さらに、労働環境の改善と収益性向上を両立する新たな漁船の導入などにより、水産業を担う経営体・人材の確保を図ります。
あわせて、海業の振興や漁村環境の保全を通じた「浜の再生」を進めます。
カキの大量へい死については、高水温等による被害対策パッケージを速やかに実行し、養殖業者の経営継続と出荷再開を支援。
また、ウナギをめぐる国際規制提案が否決されたことを踏まえ、科学的根拠に基づく資源管理を引き続き進めます。
国民理解の醸成
農林水産業・食品産業の発展には、消費者・国民の理解の醸成が不可欠としています。
食育活動や食文化の保護・継承、生産現場体験などを通じて理解を深め、食料の持続的供給につながる行動変容を促します。
あわせて、ラストワンマイル配送の取組やフードバンク等を通じた円滑な食品アクセスの確保を推進。
さらに、**2027年国際園芸博覧会(横浜)**の成功に向け、会場整備や機運醸成、日本文化や農業・環境の最先端技術を発信する展示準備を進めます。
東日本大震災からの復興
被災地域では、営農再開の加速や産地形成、森林・林業の再生、水産物の安定生産、福島県産品の販路拡大などが引き続き課題とされています。
市町村ごとに異なる復興段階を踏まえ、現場ニーズに沿ったきめ細かな支援を行います。
特に森林・林業については、林道復旧や整備が必要な森林の把握、森林作業ガイドラインの作成を進め、復興基本方針に基づく計画的な再生を継続します。
自然災害への対応
豪雨や台風など頻発する自然災害からの早期復旧・復興に取り組みます。
能登半島地震および豪雨被害については、農地・農業用施設、林地・林道、漁港の復旧を一体的に進め、農林水産業の再建を切れ目なく支援します。
また、土砂流入による藻場被害を踏まえ、藻場調査の継続支援と、影響が想定される治山工事箇所の早期復旧を進めます。
戦略本部の設置と今後の方針
昨年12月、農林水産省内に**「日本の農林水産行政の戦略本部」が設置されました。
同本部の下で、攻めの分野と守りの分野を明確化し、テーマごとに戦略を立案・実行することで、「食」を日本経済における稼ぎの柱**へと育てていく考えです。
これにより、食料の安定供給を確保するとともに、地域の維持・発展を両立する農林水産行政を進めていくとしています。
本年も農林水産行政への理解と協力を呼びかけ、
令和8年1月、**鈴木 憲和**農林水産大臣の年頭の言葉として結ばれました。
Grean Loop編集部コメント
令和8年の年頭所感は、生産性・付加価値・稼ぐ力重視への転換を明確に打ち出した内容でした。農業・林業・水産業を一体で捉え、現場と市場の両面から構造改革を進める一年となりそうです。
出典
農林水産省「農林水産大臣 年頭所感(令和八年)」
https://www.maff.go.jp/j/kunzi/r080101.html
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