※本記事は、農業協同組合新聞(JACOM)2025年8月25日掲載
「エコな農業、『東京発』の可能性 生産者、料理人、流通専門家ら討論 食と農『循環の輪』に今日から」
(https://www.jacom.or.jp/nousei/news/2025/08/250825-84012.php)を参考に、Grean Loop編集部が再構成・解説したものです。
「TOKYO農業フォーラム2025」初開催
東京都は8月21日、都内で「TOKYO農業フォーラム2025」を開催しました。テーマは「エコな農業」。都市部の生産者、料理人、流通専門家、学生団体などが一堂に会し、都市型農業の可能性や課題を議論しました。
松本明子副知事は「東京農業は新鮮な農産物を届けるだけでなく、防災や緑の保全といった多面的機能を持つ」と強調。農水副大臣の笹川博義氏も「世界的大都市・東京からの発信」への期待を語りました。
屋上農園から「ビル産ビル消」へ
基調講演に登壇したのは、俳優でありAGRIKO代表取締役の小林涼子さん。魚と野菜を循環させる「アクアポニックス」農法を活用し、ビル屋上での野菜栽培と入居飲食店への直販=「ビル産ビル消」の取り組みを紹介しました。
小林さんは「都市農業は人と人とをつなぐ。立場によって適正価格は違う。生産者と消費者との折り合いを付けるため、その農産物が生産される思いや背景を肌感からお伝えしたい」と述べました。
「顔が見える関係」が価値を生む
クロストークでは、国分寺中村農園の中村克之さん、八芳園の香山浩一料理長、エマリコくにたち代表・菱沼勇介さん、東大農業系学生団体「あぐりえこん。」の松本百永さんが登壇。
農家の視点:中村さんは「東京では消費者と顔が見える関係を築きやすい」と語り、エコ農業が持つ地域密着性を強調。
流通の視点:菱沼さんは「東京農家は品目が多彩で、それぞれの個性が味を生む」と指摘。
料理人の視点:香山さんは「顔が見える食材を使うことで、お客様に自信を持ってすすめられる」と述べました。
コストと価格転嫁の壁
ただし、エコ農業にはコスト負担の課題もあります。中村さんは「農薬なら5000円で済む防除が、生物農薬では3〜4万円かかる」と吐露。価格転嫁が難しい現状を明かしました。
一方、菱沼さんは「農業体験を通じて理解者が増えれば、合理的な価格形成につながる」と前向きに捉えました。
「江戸東京野菜」やオーガニックの広がり
展示ブースでは伝統的な「江戸東京野菜」が紹介され、多くの来場者が耳を傾けました。
また、埼玉県小川町・霜里農場の金子宗郎さんは「オーガニックは人と人をつなぐネットワーキングの意味を持つ」と語り、資源循環だけでなく「人の輪」としての意義を強調しました。
JAへの期待
国分寺中村農園の中村さんはインタビューで「JAは公平性ゆえにエコ農産物推しが難しいかもしれないが、篤農家や良い農産物をもっと応援してほしい」と注文。農協職員の「畑離れ」にも懸念を示し、「農家は世間話をしたい」と現場感覚を伝えました。
Grean Loop編集部の視点
今回のフォーラムは、都市農業が「エコ」や「サステナブル」の文脈を超えて、人と人のつながりを軸とした新しい農業モデルを提示した点に意義があります。
特に「顔が見える関係」「体験を通じた価格形成」「江戸東京野菜の文化的価値」といった切り口は、消費者が参加できる「農業の循環の輪」を広げる実践例といえるでしょう。
出典
農業協同組合新聞(JACOM)2025年8月25日掲載
「エコな農業、『東京発』の可能性 生産者、料理人、流通専門家ら討論 食と農『循環の輪』に今日から」
https://www.jacom.or.jp/nousei/news/2025/08/250825-84012.php
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