農業ニュース

農研機構、スマート農業導入効果を可視化する

※本記事は、日本農業新聞(JACOM、2025年12月4日掲載)
『農業経営計画策定支援システムの開発 スマート農業経営指標を公開』(https://www.jacom.or.jp/saibai/news/2025/12/251204-86107.php)
を参考に、Grean Loop編集部が再構成・解説したものです。

「農業経営計画策定支援システム」を公開

水田作のスマート農業導入を検討する農業者に、新たな“経営の未来予測ツール”が誕生しました。農研機構は、スマート農業技術導入による生産性向上効果を数値で比較・検証できる「農業経営計画策定支援システム」を開発し、その一部を公開しました。

このシステムは、水田作の実証データにもとづく農業経営指標(320指標)と、それを使って経営収支や作業時間をシミュレーションできるWebアプリで構成。スマート農業の導入効果を“自分の圃場条件に合わせて試算できる”点が大きな特徴です。

スマート農業導入には“事前の経営判断”が不可欠

ロボットトラクタ、操舵支援田植機、ラジコン草刈機、防除ドローンなど、スマート農業の導入には一定の機械投資が必要。そのため、導入前に

  • 収量アップによる収入増加

  • 作業時間の削減

  • 経費の削減

  • 導入コストの負担

などを総合的に比較することが不可欠です。

しかし、効果は「経営規模」「地域」「地形」「ほ場区画」「品種」によって大きく異なり、一般的な計算では実情に合わせた評価が難しい課題がありました。

経営条件に合わせて“導入効果を何度でも試算”

農業協同組合新聞より引用

農研機構が開発した新システムでは、次の項目を選択するだけで、
スマート農業 vs 慣行農業 のデータを取得できます。

選択できる項目(例)

  • 気候:寒地/寒冷地/温暖地/暖地

  • 地形:平地/中山間

  • 経営規模:15ha/30ha/50ha/80ha/100ha

  • ほ場区画:大区画/中小区画

  • 品種:多収/慣行品種

これらをもとに、10a当たりの収量、販売価格、費目別経費、作業時間を自動で取得します。

売上・利益・労働時間まで“見える化”

Webアプリではさらに、

  • 農地面積

  • 小作料

  • 常勤・臨時雇用数

  • 農業機械の条件

などを入力し、
売上高・変動費・減価償却費・経常利益まで自動計算。

さらに労働時間は 旬別の棒グラフで表示されるため、
繁忙期(田植え・収穫など)の負荷を視覚的に把握できます。

→これにより、
「スマート農業の導入が本当に経営にプラスか?」
「規模拡大は可能か?」
「雇用を増やすべきか?」
といった判断を事前に行うことができます。

今後は“部分導入”や麦・大豆指標も提供へ

現在公開されているのは“フルセット導入”を前提とした水稲向け指標ですが、

  • 一部技術のみ導入した場合の指標

  • 麦・大豆を含めた水田作全体の経営指標

についても提供に向けて検証が進められています。

水田農業の多角化・複合経営が広がるなか、経営判断の精度を高める重要なツールとなりそうです。

Grean Loop編集部コメント

スマート農業は“新しい機械を入れるかどうか”ではなく、“経営として成立するかどうか”が最も重要です。今回の農研機構のシステムは、従来の“勘と経験”に頼っていた部分をデータで裏付けられるという点で非常に大きな前進と言えます。

特に、繁忙期の労働負荷を可視化できる点は、
「後継者不足」「労働力不足」「規模拡大の判断」
といった現場の課題と直結するポイント。

今後、麦や大豆まで指標が広がれば、水田複合経営の最適化がさらに進み、地域農業の持続可能性を高めるツールとして重要な役割を果たすでしょう。

出典
日本農業新聞(JACOM、2025年12月4日掲載)
『農業経営計画策定支援システムの開発 スマート農業経営指標を公開』
https://www.jacom.or.jp/saibai/news/2025/12/251204-86107.php)

※本記事は公的資料や報道内容など、信頼できる情報をもとに構成されていますが、記載内容に誤りやご意見がございましたら、お手数ですが下記よりご連絡ください。
また、記事内容に関するご質問・情報提供・削除依頼なども、お問い合わせフォームにて受け付けております。
関係者様・メディア関係者の方も、お気軽にご連絡ください。
Grean Loop編集部|お問い合わせフォームはこちら

関連記事

コメント

この記事へのコメントはありません。

TOP