農業ニュース

かんきつ産地の未来をつなぐ──JA長崎せいひが挑む「トレーニングファーム」構想

※本記事は、Yahoo!ニュース「かんきつの産地維持へ 手放される園地をJAが借り、新規就農者向けに研修 JA長崎せいひ」
https://news.yahoo.co.jp/articles/4b6ea74a90bafb3c47afd04b9f2332bdc14b8be9)
を参考に、Grean Loop編集部が再構成・解説したものです。

長崎県のJA長崎せいひは、主力品目であるかんきつの産地維持に向けて、新規就農者を支援する「トレーニングファーム(TF)」制度を2024年6月に立ち上げた。
高齢化や後継者不足により手放される園地をJAが農地バンクを通じて借り受け、研修生がその土地で実践的に技術を習得できる仕組みだ。研修修了後には、そのまま園地を引き継ぎ、スムーズな独立・開業を実現する。

果樹産地の「空白期間」をなくす取り組み

JA長崎せいひの果樹部会では、担い手不足と出荷量の減少が深刻化している。
従来はイチゴの就農支援が中心で、ミカンなど果樹部門での新規就農者は少なかった。
そこでJAは、農地の継承をスムーズに進めるため、部会員にアンケートを実施。
手放す予定の園地を事前に把握し、農地バンクを活用して空白期間なく次世代に引き継ぐ体制を構築している。

「園地の継承を止めない」ことが、このTFの最大の目的だ。
将来的には園地だけでなく、作業場や倉庫などの設備も含めた継承を進めていく方針という。

技術習得から独立まで3年の道のり

Yahoo!ニュースより引用

研修生は3年間で独立を目指す。

  • 1年目:園主のもとで基礎研修

  • 2年目:模擬経営として実地管理

  • 3年目:園地を引き継いで独立

この制度の特徴は、収穫物の帰属が段階的に変わる点だ。
1年目は園主、2年目はTF、3年目は修了生の収入となるため、修了後すぐに農産物収入を得られる。
また、行政による補助金や座学支援も併用され、初期投資や未収益期間の負担を軽減する。

研修生の声「ミカンの可能性を広げたい」

現在、ミカンで2名が研修中。
その一人、**森剛大さん(28)**は諫早市伊木力地区で約1ヘクタールを管理している。
愛知県で製鉄関係の仕事をしていたが、家族の農作業を手伝ううちに魅力を感じ、Uターンして就農。
「さらに50アール面積を広げ、加工や販売にも挑戦したい」と語る。

SNS発信から全国へ広がる関心

JA長崎せいひはインスタグラムを通じて研修の様子を発信。
投稿を見て参加を希望する県外の若者も現れており、2025年度はミカンで1人、ビワで1人の新規参加を予定している。
今後は毎年3人の受講生を確保し、常時6人が研修できる体制を整える方針だ。
借り受け面積は1人あたり1.5ヘクタール、合計9ヘクタールを見込む。

地域の青年部による一時管理など、園地の「空白期間」を生まないための工夫も進められている。
JA長崎せいひの挑戦は、単なる人材育成を超え、地域の農地と技術を未来へつなぐ新しいモデルとして注目されている。

Grean Loop編集部コメント

JA長崎せいひの取り組みは、単なる就農支援にとどまらず、「農地・技術・人」の循環を地域全体で仕組み化する試み といえます。
農地バンクを活用して園地の空白期間をなくし、研修生がそのまま引き継ぐことで、耕作放棄や担い手不足を防ぐ実践的モデルを築いている点が注目されます。

また、SNSを通じて若者や県外からの関心が広がっていることも、「見せる農業」への時代の変化を象徴しています。
今後、こうした地域発のトレーニングファームが全国に広がることで、果樹産地の持続的な再生につながっていくでしょう。

出典:Yahoo!ニュース(https://news.yahoo.co.jp/articles/4b6ea74a90bafb3c47afd04b9f2332bdc14b8be9)

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